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2026.03「世界が静かであるという奇跡」
当別町へ向かう農道を走っていると、ふと目に飛び込んできた光景に思わず車を止めました。
刈り取りを終えたトウキビ畑。
その一面に、数百羽はあろうかというオオハクチョウの群れが、ぬかるんだ土の上で静かに餌をついばんでいます。
広大な畑に点在する無数の白。最初は何か分からず、目を凝らしてようやくそれが命の群れだと気づく――
そんな一瞬の戸惑いすら、この景色の一部のように感じられました。
昨年も同じような光景を見たはずなのに、今年はなぜか胸に迫るものが違いました。
羽を休める彼らの姿は、ただ穏やかで、ただ静かで、ただそこに「在る」だけ。
それなのに、その静けさがあまりにも大きく、広がり、どこか祈りにも似た気配を帯びているように思えたのです。
世界に目を向ければ、混沌としたニュースが絶え間なく流れ、人の営みは時に荒々しく、時に脆く揺れ動いています。
そんな中で、この畑に広がる風景はあまりにも対照的でした。
争うこともなく、急ぐこともなく、ただ季節の流れに従い、ここに降り立ち、命をつなぐ彼らの姿。
泥にまみれた畑でさえ、彼らにとっては豊かな食卓であり、安らぎの場所なのでしょう。
その光景は、「平穏」とは何かを静かに問いかけてくるようでした。
この何気ない風景が、来年も、その先も変わらず続いていくこと。
それは決して当たり前ではなく、守られるべき奇跡なのかもしれません。
白い点のひとつひとつが命であることを思うと、この広い畑がまるで世界そのもののように見えてきます。
そして、その中にある静けさが、どれほど尊いものなのかを改めて感じました。
この平穏無事な世界が、どうか永遠に続きますように――
そんな願いを、シャッターの奥にそっと込めながら。
SATOH






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